野山です。
今回は、「総論から始めよう」という話をしたいと思います。
僕はずっと「何のために何をするのか」ということを言い続けているんですが、これって超総論なんですよね。でも、多くの人は具体の話=各論から始まるんです。そして各論から始まると、目的からのブレイクダウンになりにくい。
だからこそ、やりやすいことをやっている、できそうなことをやっているにならないために、何のために何をするのかを考えるというのは、総論から始めようというルールがあるってことをお伝えしたいと思います。
総論と各論とは何か
まず、総論と各論の定義を明確にしておきましょう。
総論とは、あるテーマや課題についてのそもそもの概念、全体像とか、基本的な考え方向き合い方とか原則みたいなものを考えた部分で、全体の方向性とか目的・目標なども含む大枠をちゃんと示して、その次に話す各論を理解するための土台として機能するものです。
各論とは、総論で示された枠組みの中を前提に、個別のテーマや事例みたいなところに踏み込んで、詳細を論じること。実際にどうやるんだとか、具体的な施策って何だとか、ルールは何だとか、その辺をやりながら「こんなふうに何をすると意味があるよね」みたいなことを明確にしていって実行できるようになる部分です。
それぞれを理解したうえで「総論がわからないと、そもそもがずれる」ということを覚えておいてほしいと思います。
各論から始めるとどうなるか
各論から始めると何が起こるか。これは結構耳タコだと思うんですけど、森を作るということが目的なのに、木から始まるという話です。
森の定義を明確にしないまま、「森=木だから、まずは木を植え始めましょう」と動き始めても、それぞれが勝手にいろんな場所に木を植え始めてしまって、森にならないってなんかイメージできますよね。
なんでこうなるのかというと、各論は局所的には正しく見えるからです。
例えば「森を作る」という目的があったとき:
- 「木を植える」→論理的に正しい(森は木で構成されているから)
- 「水をやる」→論理的に正しい(木は水が必要だから)
- 「土を耕す」→論理的に正しい(木は良い土壌が必要だから)
これらは全て、狭い視点では完全に合理的です。日本語的にも、論理的にも間違いがない。
でも、これを「積み上げ式」でやっていくとどうなるか:
- Aさんは空き地に松を植える(針葉樹が好きだから)
- Bさんは別の場所に桜を植える(花が綺麗だから)
- Cさんはまた別の場所に竹を植える(成長が早いから)
結果として、バラバラの場所に異なる種類の木が植えられて、森にならない。
これが「積み上げた論理の破綻」です。
なぜ破綻するのか:
- スケールの問題:小さな範囲では正しいが、大きな範囲では機能しない
- 相互作用の無視:部分最適が全体最適にならない
- 前提の共有不足:みんな違う「森」をイメージしている
- 時間軸の無視:今正しいことが将来も正しいとは限らない
だから、最初に「どんな森を、どこに、なぜ作るのか」という**全体設計(総論)**が必要なんです。そうしないと、どんなに論理的な各論を積み重ねても、結果として意味のないものができあがってしまう。
これがビジネスでも同じことが起きているという話です。
できる人とできない人の違い
できない人は、「こういう目的なんですね」となってすぐ具体的なアクションを知りたい、となる人が多い。「具体的に何をしたらいいですか」っていうのは、各論から始めている状態です。
—
↑これ自覚ある人いますよねw
今必要になる具体的なアクションが合ってることに持続性はありません。目的や向き合っている概念がきちんと揃うことで初めて持続性のある結果に繋がってきます。
—
では本題に戻ります。
できる人、うまくいく人の場合は「目的はこう」と聞くと「それを実現するためにはこういう考え方で、こういうものに向き合わないといけないですね」っていう、抽象的な構造が気になるんです。
できない人の思考パターン:
「売上を上げたい」という目的を聞いた瞬間に:
- 「具体的に何をしたらいいですか?」
- 「どんな施策がありますか?」
- 「成功事例を教えてください」
つまり、すぐに答え(How)が欲しい。レシピを求めている状態。
できる人の思考パターン:
同じ「売上を上げたい」を聞いたときに:
- 「なぜ売上を上げる必要があるんですか?」
- 「どんな状態になれば成功と言えるんですか?」
- 「誰に対してどんな価値を提供することで売上が上がるべきですか?」
つまり、まず構造を理解したい。設計図を求めている状態。
なぜこの違いが生まれるのか:
できない人は「今すぐ使えるツール」を欲しがります。でも、ツールは状況が変われば使えなくなる。
- 去年有効だったSNS戦略が今年は効かない
- A社で成功した手法がB社では失敗する
- 競合が同じことを始めたら差別化できなくなる
できる人は「考え方の軸」を欲しがります。軸があれば、状況が変わっても応用できる。
- なぜその手法が有効だったのか?
- どんな条件が揃えば成功するのか?
- 環境が変わったらどう調整すべきか?
具体例: 「インスタで集客したいです。どんな投稿をすればいいですか?」
✗ できない人:「こういう投稿してください」→アルゴリズムが変わったら終わり
✓ できる人:「誰に何を伝えたくて、その人はどこにいて、どんな投稿なら響くか考えましょう」→本質的なので応用が利く
だから「ワンターンでHow」を求めるのはとても危険です。表面的な真似は すぐに通用しなくなるからです。
クライアントワークでの実例
クライアントと話してても、こういうケースに当たることは少なくないと思います。
「CPAが悪い」とか「これを改善するにはこれをしないといけない」「このバナーを検証したい」などなど。いろんなことをいろいろ言ってくるけど、「何のための何でしたっけ」っていう話。
僕がよくお客さんと喋ってて思うのが、わからないことを隠すために各論を散りばめる人も多いなということ。
金を出す側だからわからないって思われたくない。だから、枝葉の話をしてごまかす、みたいな人。でもその話に付き合い続けても、マジで意味がないです。
そういうときは、「目的は何でしたっけ」っていう話に戻して、そこからリーダーシップを取って話を引っ張っていかないといけません。
では次に、よりこの概念の解像度を上げるために(使いこなすために)総論と各論の構造について説明します。
総論と各論の組み合わせパターン
総論OK・各論OKが一番綺麗ではあるんですけど、総論OK・各論NGというパターンもあります。
① 総論OK・各論OK(理想的)
- 方向性も正しい、やり方も正しい
- 例:「売上を上げたい」→「新規顧客獲得で」→「SNS広告で認知拡大」
- 全部筋が通ってて実現可能
② 総論OK・各論NG(よくあるパターン)
- 目指す方向は正しいが、やり方に問題
- 例:「売上を上げたい」→「新規顧客獲得で」→「でも予算が全然ない」
- この場合:予算を確保するか、別の手法を考えるか検討が必要
③ 総論NG・各論OK(盲点パターン)
- やり方は優秀だが、そもそもの方向性が間違ってる
- 例:「売上を上げたい」と言ってるが実は利益率が問題→でもSNS広告の手法は完璧
- この場合:目的を「利益率改善」に変更して、その優秀な手法を活かせる方向を探る
④ 総論NG・各論NG(最悪パターン)
- 方向性も間違ってる、やり方も間違ってる
- 全面的に見直しが必要
なぜこの区別が重要か:
多くの人は②の状態で「各論をもっと頑張ろう」と思いがち。でも実際は:
- 総論を見直すべきなのか?
- 各論を変えるべきなのか?
- 両方なのか?
を正しく判断しないと、努力が無駄になってしまう。
③のパターンは特に見落としがちかもしれません。「頑張ってるのに結果が出ない」ときは、実は総論(方向性)が間違ってることが多い。優秀な各論(手法)があるなら、それを活かせる正しい総論を見つける方が効率的なケースもありえます。
この辺りを区別しながら、改めて総論どうしましょうかっていうこと、目的は何だっけっていうことから始めていってもらえれば、みんなの実力が高まっていくのかなと思ったりします。
まとめ
今もし「うまくいってないな」と思うんだったら、まず自分の思考を疑ってみてください。
でも、「どう疑ったらいいですか、具体的に教えてください」ではなく「私は今どういう考え方をしているんだろうか」から始めてほしい。
具体的なことは常に変わります。時代が変わる、顧客のニーズも変わる、新しいソリューションもどんどん出てくる。だから、Howなんてどうでもいいんです。
大事なのは、何のために何をするのか。この総論をしっかりと固めることです。
総論から始めよう。これができるかできないかで、あなたの仕事の質は大きく変わります。
