野山です。
今回は「学ぶ」ということについて、掘り下げていきたいと思います。
最近感じているのは、「学びたい」の次の思考として「めちゃくちゃ具体的なことができるようになりたい」と思う人が実は多いのだなということ。
「もっと美しくライティングができるようになりたい」とか、「こういうコーディングができるようになりたい」とか、「セールストークでこういうことを言えるようになりたい」みたいな。
いわゆる必殺技を求めるんですよ。
これは普段からよく言っている例えなんですが、サッカーでいうところの「ドライブシュートを打てるようになりたい」みたいなやつです。インパクトが大きそうな、今まで自分がやってこなかったような、これがあると一発逆転できそうなーーみたいなものを勉強しようとする、習得にチャレンジすることを「学ぶ」だと思っている人が多いのかなと思っています。
でも、学ぶべきは絶対に基本なんです。基本を深く理解するということが一番重要であるということを、今回はお伝えしたいと思います。
世界トップマジシャンの教え
これは、私の大好きな伊藤塾という、P&Gや吉野家で経営幹部をされた方の塾に行ったときに聞いた話。なかでも印象に残っているエピソードは
世界トップマジシャンは、100の技ができるよりも、7つの技を完璧にできる
という事実です。
7つの基本の技のレベルを徹底的に高めた人のほうが、100、200の技ができる人よりも、圧倒的に評価されている。
だからまたサッカーで例えますと(笑)、ドライブシュートは打てないが、ちゃんとトラップできる。ちゃんとパスを出せる。きっちり走って、パスをもらえる場所に行ける。こういうものがめちゃくちゃ大事なんです。
なぜなら、基礎的な技術がなければ実際のゲームでは使えないから。
ダンスから学ぶ基礎の重要性
そしてこれは、学生時代からダンスをやってきた青野さんから聞いた話。
ダンスと聞くと、素人は「ブレイクダンスみたいな派手なアクションができるとかっこいいなー」って思うじゃないですか。多分、趣味で始めた人はまずそういうのを求めると思うんです。
でも実際の、かなりレベルの高いダンススクールで2時間のトレーニングをするとなったら、まずは1時間以上基礎をやっているらしい。
つまりは、基礎のレベルを上げることを最重要項目として、自らのルーティンを組みましょうということです。
本当に何かを学びたいなら、「まずはわかりやすい技を身につけたい!」みたいなところから入らない方が絶対にいい。
じゃあ自分はどんな基礎のレベルを上げることにフォーカスするのか、セールスなのか、マーケティングなのか、クリエイティブなのか。どのジャンルであれ、自分自身の脳みそを鍛えることも大事だし、同時に、人間を理解することも非常に重要です。
学びの正しいプロセス
そういうことが往々にして世の中にはあるので、このコンテンツで言いたいことは、とにかく基礎を大事にしましょう、という話です。
基礎とは何かというと、例えばマーケティングで言うと「じゃあマーケティングってそもそも何なのか」という話ですね。
「コミュニケーション力を上げたい」「コミュニケーションを学びたい」と思ったときに、どうしゃべるかよりもまず、日本語の文脈をちゃんと読むということを、ちゃんとできるかどうか。
コピーライティングにおいても、セールスライティングとかマイクロコピーとかいろいろありますけど、反応率が高いコピーライティングを書ける技を習得しよう、ではなくて、人間の感情はどう動くのかを勉強しましょうという話です。人はなぜ物を買うのか、とか、どういった瞬間にポジティブな反応をしやすいのか、とか。
そして学ぶときに意識してほしいのは、インプットとアウトプットが紐づいているか、ということです。アウトプットとは目的・目標達成のためにするものであり、意味のあるアウトプットを出せるためのインプットであるべきだからです。
インプットとアウトプットが全然そろってない中で、「カッコいいからドライブシュートが打てるようになりたい」とそのやり方をインプットして、でもいざ実戦では使い所がない。「ドライブシュートを打てる」というアウトプットに対して、じゃあその目的・目標は何でしたっけ、という話になる。サッカーがチームスポーツであることを考えると目的・目標はチームの勝利であるはず。そもそものインプットが目的・目標の実現に向いていません。つまりは、ドライブシュートが打てたところで、その後どうするかまでを考えられてない。残念ながらこうしたケースは珍しくないと思っています。
習得したところで全然意味がない学びはあまり価値があるとは言えません。やらないといけない役割や、中長期の目的・目標を考えた上で、どういうことを学んでいかないといけないのか、どんなことができるようにならないといけないのかということを、本当にシャープに考えながら、土台部分の解像度を上げていくことがすごく大事だと思っています。
学びとは解像度を上げること
つまり、学ぶという行為は、学びたいというジャンルに対する解像度を上げるということに近いと言ってもいいと思います。
まずインプットとは経験するためにあるものです。
何かを経験するための情報、知識、物の見方、捉え方みたいなものをちゃんとインプットして、その後、実際に試してみる。
テニスで例えるならば、ルールとか、基本のスイングやショットはもちろんのこと、テニスにはどんな戦略があってこんなふうに物を見たらいいんだ、ということをちゃんとインプットしてから現場に行って、やってみる。
それをもとに「こういうアウトプットができるようになった」という状態をつくり、そのアウトプットを試合で出すことができたら勝てる確率が上がる。
要はインプットをもとに経験をする、が重要なんです。
「今のスピンの方向だったらAじゃなくてBだな」「Bでもなく、Cでもなく、これはDだ」とわかるようになるというのは、解像度が高くなっているわけです。
「学びたいもの」に対しての知識を入れながら経験をすることで解像度が高まり、よりよい選択ができるようになり、勝率が高くなります。
学びは日々の姿勢そのもの
つまりは、学びとは新しいことを始めることではありません。
学びとは、日々の取り組み方であり、「何も考えていない」=「学びがない状況」だと思っています。
何も考えず、ただラケットを振っているだけ。これが、学びがない、学んでいないという状況です。
「なぜこうなっているのか」を常に考え続けることが学びであり、「新しいことを始めよう!」「必殺技を身につけたい!」という時点で、もうそれは学びではない。
「勉強します」とか「勉強したいです」とか「もっとできるようになりたいです」と言って、まずはやれそうなことをやる、学んでいるっぽい行動を取る。だけど確かなアウトプットにはつながらない。あなたも経験はありませんか?
百々さんのコンテンツでも言及していましたが、結局、興味があるなしが大きいというのも本質だと思います。あらゆることに興味を持つということが、結局は学びに直結する。
だって、興味を持っていたら、必要なインプットが目に入ってくるようになるから。「勉強したいです」って言いながら、本当は興味ないんだろうな、というのは他人に伝わりますし、高いアウトプットにはつながりづらい。
興味があるから熱量を高く保つことができ、だからこそいろんなことが目に入ってくるし、行動にもつながる。
日々の仕事の中にも、学びのヒントはたくさんあります。
ビジネスの変化が激しくとも、ちゃんと基礎を習得し解像度を高く保っていれば、新しいトレンドが持ち上がったときにも素早く新しい手法を作れるようになったりするわけです。
学びの本質的定義
改めて整理すると、学びとは:
- 基礎を深く理解すること
- 日々の取り組みに対して常に考察すること
- 解像度を上げ続けること
- 目的・目標に紐づいたインプットとアウトプット
- 興味を持って物事に向き合うこと
派手な必殺技や新しいスキルを覚えることではありません。
世界トップマジシャンが7つの技を完璧にマスターしているように、私たちも基本となる能力を徹底的に磨き上げることが重要です。
サッカーで言えば、ドライブシュートを覚える前に、トラップ、パス、ポジショニングを完璧にする。コミュニケーションで言えば、話し方のテクニックを覚える前に、まず日本語を読み解く能力を磨く。
マーケティングで言えば、最新の手法を追いかける前に、人はなぜ物を買うのか、どう感情が動くのかという本質を理解する。
こういう順番を大事にしてほしいと思います。
まとめ
学ぶということは、新しいことを始めることではありません。
日々の仕事、日々の取り組みの中で、「なぜこうなっているのか」「どうすればもっと良くなるのか」を考え続けることです。
そして、その思考を支えるために、基礎となる知識や理解を深めていくことです。
興味を持って、解像度を上げて、目的に向かって学び続ける。そんな姿勢を大事にしていける会社でありたいと思います。
みんなが本当の意味での学びを実践して、より高いアウトプットを出せるようになることを期待しています。
