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【ベンチャー企業の採用戦略】採用活動を考えることは、会社がどうありたいかを考えること

【ベンチャー企業の採用戦略】採用活動を考えることは、会社がどうありたいかを考えること

a-worksでは数年前から、「採用活動もマーケティングである」との考えのもと、「大手が真似できない圧倒的工夫」=「エントリーマーケティング」に取り組んできました。その結果、コストを抑えながら、優秀な人材をコンスタントに採用できるようになりました。

エントリーマーケティングをスタートしてから応募者の質は年々向上しており、採用基準を引き上げることにも成功しています。

でも、a-works代表の野山は言うのです。「手法なんてぜんぜん重要じゃない。注目すべきはハウツーではないのだ」と。果たしてその真意とは…
(聞き手は、エントリーマーケティングによりオウンドメディアに誘導されて入社した広報・石原が務めます)

  1. 採用戦略を考え直すきっかけは経営危機
  2. 「どんな人を採用したいか」を明確にし、他社との差別化を図る
  3. ベンチャー・中小企業の採用活動において必要なのは「覚悟」

採用戦略を考え直すきっかけは経営危機

a-works代表の野山(右)。画像は、YouTubeチャンネルa-works野山の働き方お悩み相談室より

ーーエントリーマーケティングではオウンドメディアの活用がカギとなっていますが(参考記事)、a-worksではかなり前からブログ発信をおこなっていますよね。

野山:a-worksの公式ブログは2013年に開設しました。当初は本当に雑記のような内容が多かったのですが、業績の伸びに伴って採用を強化する必要があったため、2015年ごろから採用目線での発信をスタートました。

その当時は、大手ベンチャーを思わせるような内容を発信していたんですね。なんだかオシャレで、みんなが仲よく楽しく働いていて、福利厚生が整っていて、毎日がキラキラしていて充実している…みたいな。

2015年11月公開の引っ越し報告の記事より

野山:2015年11月にオフィスを引っ越したんですけど、オフィスの内装は東京のベンチャー企業のようなデザインに仕上げてもらいました。当時の大阪では珍しかったから目立ちましたし、人の目を引くのが正解だと思っていたんですよね。

そうした見せ方や発信によってたしかに応募者の数は増えたんですが、会社が求める人材と求職者の質がちょっとずれているなというのは感じていました。入社してもすぐに辞めてしまう、いわゆるミスマッチも多かったですね。

ーー例えばどんな?

 野山:他人や会社に「幸せにしてもらおう」と思っている感じというか…僕は「ノアの方舟現象」と呼んでいるんですが(笑)。この会社に入ればすべてがうまくいくはずだと、一方的な期待を抱いている人は多かったように思います。ただ、当時は業績が好調だったのでなんとかなっていたんですよね。

そうした状況が変わったのは2018年ごろから。さまざまな要因が重なって業績が急激に落ち込み、経営的にかなり厳しい状況に陥りました。当時のブログにも書きましたが、「早急にゲームチェンジをしないと死ぬ」という危機感があり、2019年は、どう会社を立て直すかを模索する1年を過ごしました。

ーーその時期に、かなりの退職者があったと聞きました。

野山:メンバーには会社の状況を包み隠さず伝えていたので、不安を感じて離職する人が続きましたね。経営者としてすごくキツかったのは事実ですが、それをきっかけに「そもそもa-worksは何のために存在しようとしているのか?」「事業を通して何を成し遂げたいのか? 拡大することが是なのか?本当に大事なことは何か?」と、根本から事業に向き合い、会社としての新たな指針を定めました。これは、a-worksにとって大きな転機だったと思います。

指針を定めたのちに新たな事業戦略図を作成し、全メンバーの意識統一と情報共有を図り、組織構造の革新をおこないました。この取り組みが想像以上にフィットし、 メンバー同士が互いを信頼し、高め合い、顧客の成果向上にコミットできる状態を実現できたと感じられたのが2019年の終わりごろ。
会社の考えや行動指針が社内に浸透したタイミングで、それらの内容を改めて経営方針としてまとめ、一般に公表しました。

ーー2020年2月にブログで発信した「a-worksが掲げる7つの経営方針(現在は改訂版)」ですね。

野山:会社の方針を「競争戦略」「ビジネスモデル」「採用」「教育インフラ」「組織文化」「人事評価」「財務」の7カテゴリに落とし込んでいます。経営方針を発表した理由のひとつに「採用におけるミスマッチをなくす」と掲げているように、経営方針を公表したことで発信の精度が高まりましたし、今では、社内の共通言語の役割も果たしています。

会社としての新たな指針を定めると同時に、外部発信の内容も徐々に見直していきました。「キラキラしているベンチャー企業」ではなく、「等身大の、ありのままのa-works」を発信するようにしていったんです。

ーーそれはなぜですか?

野山:過去を振り返ったとき、「ノアの方舟現象」を引き起こしていたのは、会社の見え方と実態に差があったのではと気がついたからです。今も経営方針に掲げている「関わってくれる人生の意義を高めたい」との思いは当時から発信していましたが、その前提として「セルフマネジメントがしっかりできる優秀な人材であること」といったメッセージは伝わりきっていなかったように思います。

だから、等身大であると同時に「何を考えている会社なのか」は、以前よりも強く打ち出しています。「a-worksという会社がどう在りたいか」「a-worksにはどんな人材が必要なのか」「僕たちはどんな人と一緒に働きたいか」というメッセージを発信し、会社のことをちゃんと理解してもらったうえで、僕たちの考えにマッチする人に選んでもらう必要があると思っているからです。

求職者にはa-worksという会社を多面的に見て欲しいので、いろんな角度からa-worksを紹介するコンテンツを用意しています。記事の切り口はさまざまですが、経営方針という土台があるから、芯がぶれない発信ができていると思います。

ーーやみくもに発信するのではなく、そもそもの前提として会社の指針がしっかり定まっていることが重要だと。

野山:「いい人材を採用したい」とひとことで言っても、会社によって「いい人材」の定義は異なります。a-worksにとっての「いい人材」とはどんな人物なのか、それを具体化するためには「どんな会社にしたいか」を徹底的に突き詰める必要がありました。

会社の方針が決まれば自ずと求める人材が見えてきますし、そこまで明確になってはじめて、オウンドメディアやコーポレートサイトでの発信が意味のあるものになると思います。

「どんな人を採用したいか」を明確にし、他社との差別化を図る

ーーブログで発信するテーマについては、経営方針に即していることに加えて、「a-worksが求めている人材」に向いた内容になっているかどうか、という点もすごく重視していますよね。

野山:中小企業における採用のカギは、他社との違いをしっかりと打ち出すこと。そのためにはまず「自社はどんな人を採用したいか=ターゲット」を明確にする必要があります。そこが定まっていないままでは、「届けるべきターゲットにしかるべき情報を届ける」ことができません。

例えば、a-worksの採用ターゲットは「組織文化にマッチし」「現メンバーが一緒に働きたいと思える」「変わった優秀層」。先ほど挙げたa-worksが掲げる7つの経営方針にも記しているように、弊社の「採用戦略」ではこのように明言しています。

【採用戦略】組織文化と合う、一緒に働きたいとみんなが思えた“変わった優秀層”のみを採用します。

我々が向き合う経営目的の実現は非常に難しいものだと認識しており、実現のためには「組織文化に合い、セルフマネジメントがしっかりできる優秀な人材」のみで構成される必要があると感じています。我々は中小企業だからこそ、大手企業にはできない採用を行うことで価値を生み出していきたいと思います。そこで、大手のルールに合わない変わった優秀層を引き寄せることを採用戦略として大事にすることで会社は少数精鋭の組織を創り上げてきました。この原則を大事に、そして全員で採用に参画することで多面的に評価を行い全員の合意を得ることで新しい出会いから人生の意義を高めていこうと考えています。

野山:エントリーマーケティングを手掛けたハーブ健康本舗さんでも、まずは会社が求める人物像を絞り込むところからスタートしました。「どんな人を採用したいか」が明確にならなければ、「その人たちに刺さる発信内容とは何か」「他社との差別化をどう図るか」を考えることができません。

(例)ハーブ健康本舗さまの採用コンサルでは、まずは採用の全体像とそれぞれのターゲットを洗い出し、ここからさらに詳細を詰めていきました。
(例)採用ターゲットが定まったら、同エリアの採用におけるライバル企業を洗い出し、どの軸を狙うべきかを考えます。

ベンチャー・中小企業の採用活動において必要なのは「覚悟」

ーーここまで聞いておいて今さらですが、「コスパよくいい人材を採用できるソリューションが知りたい」と思ってこの記事を読み始めた人の期待には応えられなさそうな気がしてきました(笑)

野山:たしかに(笑)。でも結局のところ、採用活動って「目に見える部分だけをなんとかすればうまくいく」というものではない、というのが僕の実感です。「この会社は何のためにあるのか」「事業を通して何を成し遂げたいのか」といった部分がしっかり定まってなければ、「エントリーマーケティング」の手法をただ模倣してもまったく意味がない。

エントリーマーケティングについて説明すると、「要はオウンドメディアでしょ、ブログで発信すればいいんでしょ」と思われがちですが、大切なのはその中身であり、「誰に何を届けるか」ということ。繰り返しになりますが、そもそもの前提として「どんな人を採用したいか」は、会社の方針が明確でなければ見えてきません。

ーー採用活動を中心に見たときに、そこまでの労力を割いている企業は多くないように思います。

野山:だから、こういうスタイルの広報に力を入れている会社って本当に少ないんですよ。手間も時間もかかるし、ハーブ健康本舗さんのようにコーポレートサイトの刷新となれば大きなお金もかかります。でもこうした施策は短期的なPLに反映しにくいので、必要性がわかっていても投資はできないと判断する企業は少なくないと思います。

エントリーマーケティングの一環として手掛けた、ハーブ健康本舗さんのコーポレートサイト。「すごいの出そう」とのコンセプトを新たに掲げ、会社が求めるチャレンジングな人材を引き寄せるための仕掛けを散りばめています。

野山:僕は常々、採用活動市場においてベンチャーや中小企業が普通に戦っても、採用に力を入れている大手企業に勝てるわけがない、と思っています。でも、ベンチャー企業だからこそ、優秀な人材を採用し続けないと未来はありません。

「採用をがんばらないといけない」「そろそろ手を打たないといけない」と思っているだけではなにも変わらない。それは、きっとみんな気づいているんですよね。それでも、動けない企業のほうがものすごく多い。だから、本当に採用に力を入れたいと考えているのなら、本気で取り組む「会社としての覚悟」が必要なんだと思います。

この「エントリーマーケティング」は、僕たちが試行錯誤しながら見つけてきた取り組みをソリューションとしてまとめたもの。もし、これを参考にしようと思ってくれる会社があるなら、その前にぜひ一度、会社の事業や在り方に向き合ってみてもらえたらいいな、と思います。